犬を飼うと認知症リスク低減 国立環境研が公表、医療・介護費を抑制

犬を飼うと認知症のリスクが低下する可能性があるとの研究結果を国立環境研究所などがまとめた。高齢者の犬の飼育が増えると、全く飼わなかった場合と比べて医療や介護にかかる公的支出を4年間で6000億円近く抑える効果を見込めると試算した。

国立環境研、東京都健康長寿医療センター、東京大学などが2016年から7年半にわたり、高齢者1万1000人あまりを調査した。研究結果を7月に学術誌に発表した。犬を飼う高齢者は飼ったことのない人と比べて認知症で介護を受けるリスクが48%低かった。散歩を通じた身体活動や社会的な交流が寄与したとみられる。

今回調べた高齢者の犬の飼育率は8.6%だった。一般社団法人のペットフード協会の調査に基づき、希望する高齢者すべてが犬を飼った場合の飼育率は13.4%になると試算した。

この場合、高齢者が全く犬を飼わなかった場合と比べて医療や介護の公的支出が4年で5920億円減るとした。今回の研究では所得や身体機能、社会的孤立の度合いといった認知症の発症に影響を与えうる要因を調整した上で結論を出した。

過去に犬を飼っていた人も、飼ったことがない人と比べて認知症になるリスクは低めだった。統計的に有意な差はなかったものの、犬を飼っていた時期に築いた人とのつながりなどが影響した可能性がある。

犬の飼育は経済活性化にもプラスの効果があると説明した。犬を飼う人が増えれば、ペットフードや保険、シッターといった関連する商品やサービスの需要が増えることが見込まれる。社会全体の支出は現在と比べて4年で4.6兆円増えると算出した。

国立環境研の谷口優主任研究員は「入院や施設への入所などを不安に感じ、犬の飼育をあきらめる高齢者がいる。預け先の確保の支援など飼い主と犬の双方を支える仕組みが重要だ」と話す。

犬を飼うと認知症リスク低減 国立環境研が公表、医療・介護費を抑制

40歳未満の大腸がん、7割で大腸菌毒素が関与 大阪大学や東京大学

大阪大学や東京大学などの研究グループは40歳未満で発生した大腸がんの約7割に特殊な大腸菌が関与していることを発見した。日本人全体でみてもおよそ半数が大腸菌によるDNAの損傷が関与している可能性があることが分かった。

大腸がんは日本で急速に増加していて、この40年で患者数は7倍にまで増えたという。また世界で50歳未満で罹患(りかん)数が増えている。これまで食生活の欧米化や生活習慣の変化が指摘されてきたが、欧米諸国よりも日本で発症頻度が多い原因などは十分に分かっていなかった。

近年一部の大腸菌が「コリバクチン」という毒素を生み出し、細胞のDNAを傷つけることが報告されている。東大の柴田龍弘教授らが2025年に発表した大規模な先行研究ではコリバクチンによるDNA損傷が世界の大腸がん患者の5〜20%で認められていた。

同研究には日本人の事例も含まれており、28例中の半数でDNA損傷の痕跡が確認されていた。

今回、柴田教授と阪大の谷内田真一教授らの研究グループは、国内の大腸がん患者200人を対象に、大腸がんと大腸菌のコリバクチンによるDNAの損傷の痕跡を調べた。その結果、日本人全体の大腸がんの約45%でコリバクチンによるDNAの損傷が認められた。

詳しく調べるとコリバクチンによる損傷は、がんを抑制する働きがある遺伝子「APC」などに変異を起こしていた。またコリバクチンによるDNAの損傷が見られる大腸がん患者では、発がんの最初期にできる遺伝子変異が10歳未満の幼少期に起きている可能性も示された。

40歳未満で発症した若年性大腸がんについて調べたところ、約70%でコリバクチンによる変異パターンが認められた。この変異パターンは1965年以降に生まれた世代で高い頻度で認められた。

谷内田教授は「ピロリ菌除菌が胃がんの予防を大きく変えたように、将来コリバクチン産生菌を標的とした新しい手法が大腸がん予防を変える日が来るかもしれない」と話す。今後は日本人の大腸がん患者でコリバクチンの関与が多い理由の究明や大腸がんの予防法などの研究を進めるという。

研究成果は英科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」に掲載された。

40歳未満の大腸がん、7割で大腸菌毒素が関与 大阪大学や東京大学

光免疫療法の治療経過を解析 関西医大と島津製作所

関西医科大学と島津製作所は15日、光を当ててがんを破壊する「光免疫療法」の効果を確かめる臨床研究を始めると発表した。光免疫療法の治療経過を特殊な分析装置で解析する。治療効果の改善などにつなげる。

光免疫療法は、がん細胞にくっつく抗体医薬を患者に投与する。抗体医薬には光に反応する色素がついており、この色素と光を反応させがん細胞を破壊する。日本では一部のがんに対する治療法として条件付きで承認されている。

今回の臨床研究は関西医科大付属病院で光免疫療法を受けている患者5人を対象に実施する。島津製作所が開発した分析装置を使い、抗体医薬の体内での分布や消費量などを調べる。これと合わせ患者の尿や血液も採取して分析し、治療効果を様々な面から評価する。

関西医科大学付属光免疫医学研究所の小林久隆所長は「光をよりピンポイントでがん細胞に当てられるようになるなど、光免疫療法の効果を高める手法の開発に役立つ」と話した。

島津製作所は今回の臨床研究で使用する分析装置を医療機器として実用化していくという。

光免疫療法の治療経過を解析 関西医大と島津製作所

人への臓器移植向けブタ誕生、安全性確認へ 明大発新興

明治大学発スタートアップのポル・メド・テック(川崎市)は13日、動物の臓器を人に移植する「異種移植」に向くブタが生まれたと発表した。移植しても免疫による拒絶反応が起きにくいようにブタの遺伝子を改変ずみだ。動物で安全性を確認して、2025年度にも臨床試験の開始を目指す。

11日に3頭のブタが誕生した。同社は23年9月、米バイオ企業のイージェネシスがゲノム編集技術で開発したブタの細胞の提供を受けた。このブタの臓器は人の免疫に拒絶されにくい。

ポル・メド・テックは、提供を受けた細胞の核をブタの卵子に入れて子宮に移植して、クローンブタを誕生させた。イージェネシスの開発したブタの腎臓を移植したサルが約2年間生存できたことがすでに確認されている。明治大学教授でポル・メド・テックの長嶋比呂志代表取締役は「国内で患者への異種移植を実施するためのスタートラインにようやく立てた」と話した。

米バイオ企業のイージェネシスから提供を受けた細胞を使ってクローンブタを誕生させた=ポル・メド・テックの長嶋比呂志代表取締役提供
異種移植の実施には国内で改めて安全性を示すことが重要になる。このため今後国内の研究機関がこのブタの臓器をサルなどに移植して検証する。

同社が臨床応用でまず想定するのはドナー(提供者)不足が深刻な腎臓だ。腎不全になり人工透析を受ける人は国内で約35万人に達する。週に数回通院して数時間の治療を受ける必要があり、体にも大きな負担がかかる。透析にかかる国内の医療費は年約1.6兆円と総医療費の4%程度を占める。

腎臓移植を受ければ通院回数や生活上の制限が減る。国内では腎臓移植を希望する患者が約1万4千人いるが、希望してから実際に移植を受けるまでには平均約15年かかる。移植を受けられずに亡くなる人も多い。異種移植の実用化にあたっては、患者を含む市民の理解や法規制の整備が必要になる。

人への臓器移植向けブタ誕生、安全性確認へ 明大発新興

キタシロサイの「卵子のもと」阪大が作製 iPS細胞使い世界初、絶滅回避へ一歩

世界で2頭しか生き残っていない絶滅危惧種のキタシロサイの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使い、卵子や精子のもとになる細胞を世界で初めて作製したと、大阪大などの国際チームが10日、米専門誌で発表した。卵子を4~5年後に作り、人工授精によって絶滅の回避を目指す。

アフリカ原産のキタシロサイは、角が高値で売買されるため密猟が横行し野生の個体は2008年に絶滅。保護された個体も18年に最後の雄が死亡し、生存しているのはケニアの保護施設にいる母子の雌2頭だけで、絶滅は時間の問題だ。

人のiPS細胞を作る方法は確立しているが、野生動物の場合は作製条件などが異なる。このためチームは個体数が比較的多い近縁種のミナミシロサイを使って条件を解明。これを応用してキタシロサイのiPS細胞を作り、卵子などの生殖細胞のもとになる細胞を作ることに成功した。

今後は生殖細胞の形成を補助する他の細胞も作って卵子を作製し、凍結保存されている精子と人工授精させる。現存する雌は高齢で、人でいうと60歳と40歳に当たるため、受精卵はミナミシロサイの子宮に移植し次世代誕生を目指す。将来は精子もiPS細胞から作製する計画という。

大阪大の林克彦教授(生殖遺伝学)は「多様な哺乳類に応用できるとみられ、絶滅危惧種の保全や繁殖に役立てたい」としている。

中国・復星、iPS細胞で再生角膜 慶大発新興から権利

中国製薬大手の上海復星医薬集団は、iPS細胞を使った再生医療技術の実用化に乗り出す。慶応義塾大学発の新興企業から、同細胞による培養角膜細胞の開発権を取得。2020年代後半に中国などでの承認取得を目指す。中国は先進国に後じんを拝す再生医療分野で巻き返しに動いており、今後は政府・企業による強化策が相次ぎそうだ。

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