人への臓器移植向けブタ誕生、安全性確認へ 明大発新興

明治大学発スタートアップのポル・メド・テック(川崎市)は13日、動物の臓器を人に移植する「異種移植」に向くブタが生まれたと発表した。移植しても免疫による拒絶反応が起きにくいようにブタの遺伝子を改変ずみだ。動物で安全性を確認して、2025年度にも臨床試験の開始を目指す。

11日に3頭のブタが誕生した。同社は23年9月、米バイオ企業のイージェネシスがゲノム編集技術で開発したブタの細胞の提供を受けた。このブタの臓器は人の免疫に拒絶されにくい。

ポル・メド・テックは、提供を受けた細胞の核をブタの卵子に入れて子宮に移植して、クローンブタを誕生させた。イージェネシスの開発したブタの腎臓を移植したサルが約2年間生存できたことがすでに確認されている。明治大学教授でポル・メド・テックの長嶋比呂志代表取締役は「国内で患者への異種移植を実施するためのスタートラインにようやく立てた」と話した。

米バイオ企業のイージェネシスから提供を受けた細胞を使ってクローンブタを誕生させた=ポル・メド・テックの長嶋比呂志代表取締役提供
異種移植の実施には国内で改めて安全性を示すことが重要になる。このため今後国内の研究機関がこのブタの臓器をサルなどに移植して検証する。

同社が臨床応用でまず想定するのはドナー(提供者)不足が深刻な腎臓だ。腎不全になり人工透析を受ける人は国内で約35万人に達する。週に数回通院して数時間の治療を受ける必要があり、体にも大きな負担がかかる。透析にかかる国内の医療費は年約1.6兆円と総医療費の4%程度を占める。

腎臓移植を受ければ通院回数や生活上の制限が減る。国内では腎臓移植を希望する患者が約1万4千人いるが、希望してから実際に移植を受けるまでには平均約15年かかる。移植を受けられずに亡くなる人も多い。異種移植の実用化にあたっては、患者を含む市民の理解や法規制の整備が必要になる。

人への臓器移植向けブタ誕生、安全性確認へ 明大発新興

キタシロサイの「卵子のもと」阪大が作製 iPS細胞使い世界初、絶滅回避へ一歩

世界で2頭しか生き残っていない絶滅危惧種のキタシロサイの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使い、卵子や精子のもとになる細胞を世界で初めて作製したと、大阪大などの国際チームが10日、米専門誌で発表した。卵子を4~5年後に作り、人工授精によって絶滅の回避を目指す。

アフリカ原産のキタシロサイは、角が高値で売買されるため密猟が横行し野生の個体は2008年に絶滅。保護された個体も18年に最後の雄が死亡し、生存しているのはケニアの保護施設にいる母子の雌2頭だけで、絶滅は時間の問題だ。

人のiPS細胞を作る方法は確立しているが、野生動物の場合は作製条件などが異なる。このためチームは個体数が比較的多い近縁種のミナミシロサイを使って条件を解明。これを応用してキタシロサイのiPS細胞を作り、卵子などの生殖細胞のもとになる細胞を作ることに成功した。

今後は生殖細胞の形成を補助する他の細胞も作って卵子を作製し、凍結保存されている精子と人工授精させる。現存する雌は高齢で、人でいうと60歳と40歳に当たるため、受精卵はミナミシロサイの子宮に移植し次世代誕生を目指す。将来は精子もiPS細胞から作製する計画という。

大阪大の林克彦教授(生殖遺伝学)は「多様な哺乳類に応用できるとみられ、絶滅危惧種の保全や繁殖に役立てたい」としている。

中国・復星、iPS細胞で再生角膜 慶大発新興から権利

中国製薬大手の上海復星医薬集団は、iPS細胞を使った再生医療技術の実用化に乗り出す。慶応義塾大学発の新興企業から、同細胞による培養角膜細胞の開発権を取得。2020年代後半に中国などでの承認取得を目指す。中国は先進国に後じんを拝す再生医療分野で巻き返しに動いており、今後は政府・企業による強化策が相次ぎそうだ。

引用:日本経済新聞(9月10日付け)

クローンマウス、9か月凍結乾燥の体細胞から…絶滅危惧種の「保存」に道

山梨大の研究チームは、凍結乾燥させたマウスの体細胞を使って同じ遺伝情報を持つクローンマウスを作製することに成功したと、発表した。チームは「絶滅の恐れのある種を救う新たな手段につながる」としており、論文が6日、国際科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載される。

 チームは、マウスの尻尾などから採取した体細胞を凍結乾燥させ、零下30度で最長9か月間保存した。その後、体細胞から取り出した「核」をもとに、様々な細胞に変化する胚性幹細胞(ES細胞)を作製。ES細胞の核を卵子に移植した。この卵子をメスの体内に移したところ、赤ちゃんマウスが誕生したという。


 チームは、クローンの赤ちゃんマウス計75匹の作製に成功。このうち、メスは妊娠能力も正常で、健康な子どもを産んだ。チームは既に凍結乾燥させたマウスの精子から子どもを作ることに成功している。

 絶滅が心配される動物をめぐっては、卵子や精子を保存する試みが始まっているが、採取条件に制約がある。これに対し、体細胞は、年齢や健康状態に関係なく採取できる。チームの若山照彦・山梨大教授(繁殖生物学)は「体細胞の凍結乾燥で、オスしか残っていない絶滅危惧種からメスを作り出す技術を実現させたい」と話す。

  斎藤通紀・京都大教授(発生生物学)の話 「遺伝情報を従来より容易に保存できる可能性を開く成果だ」

凍結乾燥させた体細胞を使って 産まれたクローンマウス(山梨大提供)

凍結乾燥させた体細胞を使って 産まれたクローンマウス(山梨大提供)

クローンマウス、9か月凍結乾燥の体細胞から…絶滅危惧種の「保存」に道

理研・RBI・エピストラ、細胞培養の条件検討を自律的に試行錯誤する ロボット・AIシステムを開発

発表日:2022年06月27日
再生医療用細胞レシピをロボットとAIが自律的に試行錯誤

−ロボット・AI・人間の協働は新しいステージへ−

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクト(研究当時)の神田元紀上級研究員(研究当時、現バイオコンピューティング研究チーム上級研究員)、高橋政代プロジェクトリーダー(研究当時、現バトンゾーン研究推進プログラム眼科領域遺伝子細胞治療研究チーム客員研究員、株式会社VC Cell Therapy 代表取締役)、バイオコンピューティング研究チームの高橋恒一チームリーダー、ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社の夏目徹取締役、エピストラ株式会社の都築拓取締役・CTO、小澤陽介代表取締役・CEOらの共同研究グループは、細胞培養の条件検討を自律的に試行錯誤するロボット・AIシステムを開発し、実際に再生医療で用いられる細胞培養のレシピを改善させることに成功しました。

本研究成果は、科学実験のデザインと実行を自動化する要素技術となり、生命科学実験全般の効率的な試行錯誤や再現性の向上に貢献すると期待できます。

今回、共同研究グループは、高精度な生命科学実験動作が可能な汎用ヒト型ロボット LabDroid「まほろ」[1]と新たに開発した人工知能(AI)ソフトウェア(最適化アルゴリズム)を組み合わせたシステムを設計し、このシステムがiPS細胞(人工多能性幹細胞)[2]から網膜色素上皮細胞(RPE細胞)[3]への分化誘導工程において、分化誘導効率を高める培養条件を人間の介在なしに自律的に発見できることを実証しました。

本研究は、科学雑誌『eLife』(6月28日付:日本時間6月28日午後4時)に掲載されます(WEBの公開は6月28日午後4時の予定です)。

※参考画像は添付の関連資料を参照

※以下は添付リリースを参照

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iPS細胞の培養、AIとロボットで効率化…理化学研究所など 網膜細胞で成功

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