新聞等に掲載された、がん治療に関する記事をご紹介します。

ウイルスがん治療薬、厚労省が承認

厚生労働省は11日、ウイルスを使ってがん細胞を攻撃する日本初の「がんウイルス療法」の新薬の製造販売を承認した。治療薬は、脳腫瘍の一種である悪性神経膠腫(こうしゅ)に用いる「テセルパツレブ」。有効性や安全性を7年間確認する条件付きで、第一三共が製造販売する。口唇ヘルペスの原因となるウイルスを、がん細胞だけで増殖できるよう改変し、正常細胞は傷つけず、増殖によりがん細胞を次々と死滅させる。

がん「第5の治療法」世界初の研究所 関西医大、22年に

関西医科大学(大阪府枚方市)は2022年4月に、「第5のがん治療法」として期待を集める「光免疫療法」で世界初の研究所を設立する。開発者で所長に就任する米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員は12日、現在対象の顔や首のがんに加え「乳がんなどへの適用も検討する」と話した。様々ながんの患者に新たな選択肢を提供する。

光免疫療法はまず、がん細胞と結びつく薬剤を患者へ投与する。薬剤ががんの近くに集まった後に、近赤外線のレーザー光を当ててピンポイントで破壊する。

NIHの小林主任研究員が発明し、楽天グループの楽天メディカル(米カリフォルニア州)の前身企業が特許のライセンスを取得して開発を進めた。12年には当時のオバマ米大統領が一般教書演説で取り上げて注目を集め、手術、放射線、抗がん剤、免疫薬に続く「第5のがん治療法」と呼ばれる。

楽天メディカルが実施した米国での臨床試験(治験)では、従来の治療で効果がなかった頭頸(とうけい)部がんの患者30人のうち、43%にあたる13人でがんが消えたり縮んだりした。

20年9月に楽天メディカル子会社が、世界に先駆けて日本で製造販売の承認を取得。現在は日本だけで治療に使え、3月中旬時点で国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)や愛知県がんセンター病院(名古屋市)など、全国の約20の病院が導入している。

関西医大が新設する光免疫医学研究所は「光免疫療法」や「免疫」などの3部門に分かれ、約30人が在籍する予定だ。現在は外からレーザーを当てやすい頭頸部がんに限られている。対象を患者数が多い大腸がんや皮膚がんに広げたり、副作用を抑えたりするための研究を進める。

内視鏡で体の深部にレーザーを当てたり、全身の免疫をうまく調整して副作用を抑えたりする技術開発が求められる。所長に就任する小林氏は「まず乳がんや食道がん、子宮頸(けい)がんが対象として有望。将来的にはがん患者の8割に役に立てるようにしたい」と話す。

18年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授が開発した免疫薬との併用や、免疫細胞の働きを抑える細胞をたたく治療法の開発も選択肢に挙がる。

研究所では治験も進める。小林氏は「特に臨床では高いレベルで、楽天メディカルと連携したい」と話す。楽天メディカルジャパンの担当者は「治療法開発へ可能な限りサポートしていきたい」と話す。関西医大の臨床部門と連携し、患者のがん組織を調べるなどして治療効果を高める。

光免疫療法の治療薬の価格は患者の体の大きさにより異なるが、平均すると1回投与当たり約400万円で、最大4回まで使える。国の医療保険などで患者負担は1回最大で約30万円だ。

楽天メディカルは光免疫療法と免疫薬を併用する治験を、米国で頭頸部がんと皮膚がんを対象に進めている。国立がん研究センター東病院も食道がんで光免疫療法の医師主導の治験を進めているほか、胃がんでも計画中だ。

iPSがん治療 国内初の移植実施 千葉大など免疫細胞利用

人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した「NK(ナチュラルキラー)T細胞」という免疫細胞をがん患者に移植する世界初の治験について、千葉大と理化学研究所の研究チームが移植手術を実施したことが21日、分かった。手術は成功したという。iPS細胞を使った再生医療の研究でがん患者に移植手術を行ったのは国内で初めて。

【写真】顕微鏡でみるiPS細胞

 移植手術は口やのどなどの「頭頸部(とうけいぶ)」にがんができ、抗がん剤などの効果がない患者に14日、千葉大付属病院で実施した。リンパ球の一種で、がん細胞を攻撃する働きを持つNKT細胞を健常者から採取しiPS細胞を作製。ここから再びNKT細胞を作って大量に培養し、患部に移植した。

 計3回移植し、安全性や有効性を2年間確かめる。本橋新一郎・千葉大教授は「安全性の確認を第一に進め、新しい治療法を早く患者に届けたい」と話した。

 頭頸部がんは鼻や口、のどなどにできるがんの総称で、国内患者は推定で数万人。NKT細胞を患者から採取して増やし、体内に戻す治療法もあるが、この細胞は体内にわずかしかなく増やすのに時間もかかる。iPS細胞を使えば十分な量で迅速に治療できる。

 NKT細胞はT細胞などに続く「第四のリンパ球」と呼ばれ、理研チームが昭和61年に発見した。多くの免疫細胞が司令塔役の細胞の指示で異物を攻撃するのに対し、指示なしで攻撃。他の免疫細胞を活発化させる働きも強く、高い治療効果が期待されている。

 千葉大などは今年5月、国の審査機関である医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験の実施を届け出て認められていた。計4~18人に移植を予定している。

iPSがん治療 国内初の移植実施 千葉大など免疫細胞利用

出典:産経新聞

iPS細胞でコロナ治療法開発 京大の技術、免疫細胞を作製

藤田医大(愛知県豊明市)は14日、京都大発医療ベンチャー「リバーセル」と、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った新型コロナウイルス感染症の新しい治療法開発に乗り出すと発表した。京都大の技術で、新型コロナに感染した細胞を攻撃する免疫細胞「キラーT細胞」をiPS細胞から作製し、患者に投与する。2~3年以内の臨床応用を目指す。

 リバーセル取締役の河本宏・京都大教授(免疫学)は「この治療法が切り札となり、重症者を救えるようになれば怖い病気ではなくなる。早期の実用化を目指したい」と話した。

 河本教授によると京大の財団が備蓄する拒絶反応が起きにくいiPS細胞を使う。

長崎大が新再生医療 十二指腸がんに「細胞シート」

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