先進医療ニュース
ネコを飼った経験のある人の多くはご存じだろうが、ほとんどのイエネコは高齢になると腎臓病を発症する。
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そして、腎臓の機能は一度失われると回復せず、長く苦しむネコも少なくない。愛猫家の心を痛めるこの問題で、発症の原因を解明し、治療法を開発したのが東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センターの宮崎徹教授(59)だ。現在はネコ用の腎臓病治療薬を世に出すために奔走している。(時事ドットコム編集部)
―宮崎先生は獣医師ではなく、人間の病気を治すお医者さんなのに、なぜネコの腎臓病治療に取り組まれたのでしょう?
私は30年ほど前、病院で患者さんを診療する臨床医から、病気の成り立ちや難病の治療法を解明する基礎研究者に転じました。1995年からのバーゼル免疫学研究所(スイス)在籍時に、人間の血液中に高い濃度で含まれているタンパク質を発見し、「AIM」と名付けました。
―「AIM」は何かの略語ですか?
人間の体には、体内に侵入した細菌や異物を食べて病気にならないように守る免疫細胞「マクロファージ」が備わっています。「マクロファージを死ににくくする・元気にする」という意味の英語の頭文字を取りました。
―免疫細胞を活性化するということは、免疫に関係するタンパク質なのでしょうか?
それが、最初のうちはAIMが体内でどんな働きをしているのか、さっぱり分かりませんでした。10年ほど研究を続け、動脈硬化の成り立ちに関係したり、脂肪細胞にたまっている脂肪を小さくしたりすることなどが判明しました。
―脂肪を小さくするのであれば、ダイエットに役立ちそうですね。
はい。そのことで少し話題にはなったのですが、実はそれがAIMの本質ではありませんでした。
―その本質をどのように解明されたのでしょう?
ある時ふと「人間以外の動物もAIMを持っているのだろうか」と考えて、イヌやネコの血液を調べてみると、ネコだけAIMを持っていませんでした。
―ネコだけですか。
正確には「持っているけど、他の動物のように機能していない」ということです。
―ネコと他の動物を比較すればAIMの機能が分かるということですね。
お恥ずかしい話、最初はそこに気付かず、「へえ、ネコにAIMはないんだ」と思っただけでした。
―いつ気付いたのですか?
ある時、獣医師さんと話していて「ネコのほとんどは年を取ると腎臓病になる」ことを知り、ピンときました。
―そこがスタートになったわけですね。
ただ、医学部にネコの患者さんは来ませんから、研究には日本中の獣医師さんに協力していただきました。
―先生は人間の病気を治すお医者さんだったのでは…。
皆さん、そうおっしゃるのですが、私は病気の治療法を見つけるのが仕事なので、相手がネコでも人間でも自分にできることはしたいのです。それに今は「ワンヘルス」といって、人間も動物も同じように一体として病気を診よう・治そうという機運が高まっています。ネコで治療法を見つければ、それは人間の治療法につながるということです。
―AIMはどうやって腎臓病を治すのでしょう?
腎臓で血液の中の老廃物をろ過して尿として体外に流していきますが、多くの腎臓病は、その尿の通り道の最初の部分がごみで詰まってしまい、腎臓が徐々に壊れていくために起こります。でも、AIMがきちんと働いていれば、そういった詰まりはその都度、AIMが解消してくれるのです。
―だからAIMが機能しないネコは、腎臓病になるということですね。
腎臓はキャパシティーが大きな臓器ですから、ある程度の部分までは壊れても機能しますが、詰まったごみがうまく取り除かれないと、腎臓の破壊が何年もかけて少しずつ進み、ある時、腎不全を起こして飼い主さんは病院に駆け込むことになります。
―ネコの体内に、きちんと機能するAIMを注入してやれば、腎臓病の進行を止められるのですか?
すでにそのような効果を多くのネコで確認しています。
―もともとAIMが機能していないネコに、きちんと機能するAIMを若い時期から投与すれば、腎臓病にはならず、長生きできるわけですね。
獣医師さんによると、ネコの平均寿命の2倍、最長で30歳くらいまで生きるようになるということです。それに何よりも、腎臓病で長く苦しむことがなくなります。
―それは、飼い主さんにとってもうれしいことですね。
でも、AIMの効果が確認できたからといって、すぐ薬にできるわけではありません。
―それはなぜでしょう?
AIMはタンパク質です。タンパク質製剤は化学合成できる粉薬や錠剤と違い、生きている培養細胞に作らせて、そこから純度の高いAIMを精製する必要がありますから、莫大(ばくだい)な労力とコストが必要になります。
―そのための資金が必要なわけですね。
実は、ある会社がスポンサーになってくれて、治験薬を作り国から薬としての承認を受ける治験を行うめどが立つところまでは、数年かけていっていました。ところが、新型コロナウイルスのせいで社会全体が経済的な打撃を受けたことで、プロジェクトはいったん中断しています。
―新型コロナウイルスのためにネコの薬が作れないのは切ない話です。
資金難を克服し、何とかプロジェクトを再開できるよう、日本だけでなく、海外にも働き掛けています。その一環で、「猫が30歳まで生きる日」(時事通信社から8月刊行)を書きました。AIMがネコと人間にどんな未来をもたらすのか、できるだけ多くの人に知ってもらいたいと考えています。
Yahoo Japan ニュース
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/a8d2184351c97c52d3b48326145934a2288692bf?fbclid=IwAR0xWExdxMfwxcH323yni2Y5MoSj1uijnkYiu0kK96pi8kb7ydPZCafeJrw
ウイルスでがん破壊、治療薬承認へ 脳腫瘍の一種に効果
ウイルスを使ってがん細胞を破壊する治療薬が、承認される見通しになった。厚生労働省の専門部会が24日、製造販売の承認を了承した。臨床試験(治験)では標準治療と比べて1年後の生存率が6倍になるなどの延命効果が示された。がんに対するウイルス治療薬が承認されるのは国内で初めて。
【写真】オンラインで取材に応じる東京大医科学研究所の藤堂具紀教授=5月20日
審査期間が通常より短い国の制度が適用された。今後、薬を患者に使ったうえで7年間データを集め、有効性と安全性を改めて確認する条件がついた。
この薬は、第一三共などが開発したがん治療薬「デリタクト注」。対象となる病気は脳腫瘍(しゅよう)の一種「悪性神経膠腫(こうしゅ)」で、脳内の細胞ががん化することで起きる。中でも代表的な「膠芽腫(こうがしゅ)」は国内に推計2500人程度の患者がいる。手足のけいれんなど神経障害が生じ、脳腫瘍の中でも進行が早い。
脳の腫瘍内に、特殊なウイルスを一定間隔で最大6回注入する。東京大医科学研究所の藤堂具紀(ともき)教授がヘルペスウイルスの三つの遺伝子を改変し、体内に注入したときにウイルスががん細胞内のみで増殖し、がん細胞を攻撃するように設計した。正常な細胞ではウイルスは増えない。
治験では手術や抗がん剤などの標準治療後に効果が十分でなかったり、再発したりした膠芽腫の患者が対象になった。13人の中間解析結果では1年後の生存率が92・3%で、単純比較はできないが一般的な標準治療後の生存率15%よりも大幅に高かった。19人でみた生存期間の中央値は約20カ月だった。1施設だけの結果で生存率を評価するのは難しかったが、腫瘍の縮小効果の分析などを含め一定の有効性があると判断された。
有望な薬について審査期間を短くする国の「先駆け審査指定制度」の対象になっていた。(市野塊)
ロシア、ペット用ワクチン承認 コロナ感染予防
【モスクワ共同】ロシアの動物検疫当局は31日、ペットや家畜を新型コロナウイルス感染から予防するワクチン「カルニワク・コブ」がロシアで承認されたと発表した。動物向けワクチンの承認は世界で初めてとしている。
同ワクチンは昨年10月からイヌ、ネコ、キツネ、ミンクなどの動物を対象に臨床実験が行われ、ワクチンを接種した動物の100%にコロナウイルスに対する抗体がつくられ、高い効果を示したという。
ロシア当局は現在、同ワクチン接種により形成される免疫がどれだけの期間有効となるか調査中だが6カ月以上は確実とみている。動物向けワクチンは4月にも大量生産が始まる見通し。
拍動するミニ心臓、マウスのES細胞から作成…東京医科歯科大チーム
マウスのES細胞(胚性幹細胞)から、大きさ約1ミリの拍動するミニ心臓を作ることに成功したとする研究成果を、東京医科歯科大などの研究チームが3日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズで発表した。血液は流れていないが、心室と心房が連動して動くポンプ機能を確認したという。
ミニ心臓は血管がなく、栄養を表面からしか取り込めないため、更に成長させて別のマウスへ移植することは難しい。ただ、薬剤で不整脈の心拍を起こすことに成功しており、同大の石野史敏教授(発生生物学)は「ミニ心臓で新薬の効果を調べたり、毒性を評価したりできる」と話している。
石野教授によると、ミニ心臓は受精から14日目の胎児の心臓に近い形をしている。研究チームは、臓器となる細胞が備える「自己組織化」と呼ばれる仕組みを導く独自の手法を考案。マウスのES細胞を心臓の形成に必要なたんぱく質が含まれたゲル状の培地に置いたところ、心室と心房組織への順調な分化が確認できた。従来は細胞を培地に埋め込んでいた。
同様の手法で、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から大きさ1ミリ程度のミニ心臓を作る研究も進めているという。
慶応大の福田恵一教授(循環器内科)の話「心臓は複雑な臓器で、哺乳類で形成できたのは興味深い。試験管内で心臓の各部の発生を観察できるようになり、様々な研究で役立つだろう」
拍動するミニ心臓、マウスのES細胞から作成…東京医科歯科大チーム
出典:読売新聞オンライン
認知症の原因物質 歯周病によって蓄積する仕組みを解明
歯周病菌が体内に侵入し、認知症の原因物質が脳に蓄積して記憶障害が起きる仕組みを九州大などの研究チームが解明した。歯周病と認知症の関連は近年注目を集めており、認知症対策につながる発見という。
認知症の7割を占めるアルツハイマー病は、「アミロイドベータ(Aβ)」などの異常なたんぱく質が長年、少しずつ脳に蓄積し、発症や症状の進行につながるとされる。
近年、歯周病の原因菌やその毒素が血管を通じて体内に侵入することで、Aβが体内でつくられ、脳に蓄積することが解明されてきたが、蓄積の仕組みは詳しく分かっていなかった。
九大や北京理工大(中国)などの研究チームは、マウスの腹の内部に3週間、歯周病菌を直接投与して感染させ、正常なマウスと比較した。
その結果、歯周病菌に感染したマウスの脳血管の表面では、Aβを脳内に運ぶ「受容体」と呼ばれるたんぱく質の数が約2倍に増えていた。脳細胞へのAβの蓄積量も10倍に増えた。
暗い部屋に入れば電気ショックを受けることを学ばせた記憶実験では、正常なマウスは5分間、明るい部屋にとどまり続けたが、感染マウスは約3分で暗い部屋に入ってしまい、記憶力低下が裏付けられた。
一方、Aβを運ぶ受容体の働きを阻害する薬剤を使えば、感染した細胞内を通るAβの量を4割減らせることも確認できたという。
チームの武洲(たけひろ)・九大准教授(脳神経科学)は「歯周病菌が、異常なたんぱく質が脳に蓄積することを加速させてしまうことが明らかになった。歯周病の治療や予防で、認知症の発症や進行を遅らせることができる可能性がある」と話す。(竹野内崇宏)
認知症の原因物質 歯周病によって蓄積する仕組みを解明
出典:日本新聞DIGITAL
アップルウオッチ、医療用に 「心電計」アプリ、厚労省が認定 IT大手も開発競争
米アップルの腕時計型端末「アップルウオッチ」に搭載されたアプリを厚生労働省が医療機器として認定した。心電と心拍が測れ、一般向け製品で初の心電計となる。常時データが把握できるため病気の早期発見などにつながる可能性がある。アプリの用途がこれまでの健康維持から医療に広がることで、医療用途のウエアラブル端末の開発競争が加速しそうだ。
アップルウオッチで心電や心拍などのデータを計測、iPhoneを通じて医師と共有する