ワクチン開発
ニパウイルスワクチン、東大が4月に臨床試験開始へ 発症防ぐ期待
東京大学先端科学技術研究センターは、インドで1月に複数の感染者が確認されたニパウイルス感染症の発症を防ぐ効果を期待できるワクチンを開発した。4月からベルギーで初期段階の臨床試験を始める。ニパウイルスに対する有効なワクチンは現在は無い。感染すると致死率が高く、早期のワクチンの実用化に期待が高まる。
ニパウイルスの発生が報告されるなか、タイの空港でインドからの到着便の乗客に対する健康スクリーニング措置が実施された(25日) =ロイター
ニパウイルスは動物とヒトに感染する「人獣共通感染症」の一つだ。自然界では熱帯雨林などに生息するオオコウモリが持つ。ウイルスに感染した動物の体液などに汚染された果物を食べたり、感染者の唾液や血液などに触れたりするとうつる恐れがある。致死率は4〜7割に達するとされ、現時点で感染や発症などを防ぐワクチンや治療に使える抗ウイルス薬は無い。
研究チームはニパウイルスの一部の遺伝情報を麻疹ウイルスに組み入れたワクチンを開発した。ヒトに投与すると体内でニパウイルスのものと似たたんぱく質が作られる。すると病原体から体を守る免疫の力が強まり、ニパウイルスに感染した後に発症を防げる可能性がある。
麻疹ウイルスははしか向けのワクチンとして世界で広く使われており、安全性が証明されている。ワクチンとして接種すれば強い免疫反応や効果を期待できるとされる。
東大はハムスターなどの動物実験でニパウイルス感染症の発症を防ぐ効果や安全性を確認した。医薬品の品質や製造管理に関する基準に対応したワクチンを使い、60人を対象にベルギーでヒトに投与して安全性を確認する初期段階の臨床試験を4月に始める予定だ。ドイツに拠点を置く非営利のパートナーシップ「欧州ワクチンイニシアチブ」と連携して実施する。
27年後半にはニパウイルスのヒトへの感染が確認されたバングラデシュで大人と子供を対象に、安全性や有効性を確認する初期から第2段階の臨床試験も始める。日本のワクチン開発司令塔である先進的研究開発戦略センター(SCARDA)が必要な資金を援助する。ワクチンの生産を担う企業を募るなどして実用化をめざす。
ワクチンを開発した東大の米田美佐子特任教授は「ニパウイルスは体で広がるが、ウイルスを減らす薬は現時点で無い。予防にはワクチンが重要だ」と話す。
電子顕微鏡で観察したニパウイルス(赤い部分)=米国立アレルギー感染症研究所提供
ニパウイルス感染症のワクチンは英国のオックスフォード大なども開発中で、25年12月にバングラデシュで第2段階の臨床試験を始めた。18〜55歳の約300人が参加する予定という。
ニパウイルスは南アジアをはじめとする途上国などで流行することが多い。製薬企業にとって利益が見込みにくく、ワクチンや治療薬の開発に乗り出しにくい問題がある。ワクチンの実用化には各国政府や公的機関の支援が重要になりそうだ。
ニパウイルスワクチン、東大が4月に臨床試験開始へ 発症防ぐ期待
出典:日本経済新聞
