ペットと一緒に空の旅、スターフライヤーが課題検証フライト

 スターフライヤー(北九州市)は2日、国内線でペットの犬や猫と同乗できるサービスを導入するため、検証フライトを始めた。3日まで社員のペットで手続きなどを確認し、年明けにも導入したい考えだ。実現すれば国内の定期便では初めてだが、鳴き声や臭いが乗客に不快感を与える可能性もあり、課題も少なくない。フライトに同乗した。(松田晋吾)

 2日早朝、北九州空港(北九州市)の搭乗カウンターに、小型犬を連れた同社社員の中山圭介さん(41)がペット同乗の手続きに訪れた。中山さんがペットのワクチン接種証明書を提出すると、カウンターの係員は「(犬の)体調は大丈夫ですか」などと確認。臭い防止用のおむつを着け、専用ケージ(50センチ×40センチ×40センチ程度)に入れた。

 中山さんはそのままケージを抱えて羽田行きの航空機に乗り込むと、最後尾の窓側座席にケージを置いてシートベルトで固定し、隣に着席した。「何度か貨物室に預けたことがある飛行中は様子が分からず不安だった」という。

 機内でケージから出すことや餌やりは禁止されているため、中山さんはケージ越しに水を与え、体調の変化などをこまめに観察していた。記者も近くに座ったが、約1時間半後に羽田に着くまで鳴き声は聞こえず、臭いも感じなかった。

 中山さんは「一緒に旅行しているような気持ちになり、うれしかった」と笑顔を見せ、同じ便に乗っていた北九州市の大学生(19)も「どこにいるか分からないほど静かだった」と話していた。

飛行中の機内では、隣の座席のペットの様子を見守った

 同社によると、2日のフライトでトラブルなどはなかったという。

 同社が新サービスに乗り出すきっかけとなったのは、新型コロナウイルスの感染拡大による需要低迷だ。2020年度の国内線搭乗率は約4割にとどまり、業績面でも最終利益は100億円の赤字となった。

 収益源の開拓に迫られる中で着目したのが、ペット同乗だった。海外の航空会社では「ペットを機内に持ち込めるのは当たり前」(デルタ航空)とされる。

 さらに、ペットフード協会(東京)の20年の推計では、1年以内に新たに飼育された犬や猫は、外出自粛を背景に前年と比べ15%ほど増えた。スターフライヤーはペット愛好家らの需要が見込めると判断し、9月に導入検討を公表。直後から「ペットと遠出ができる」などの反響があった。

 課題も浮かび上がってきた。機内でペットがほえたり臭いが広がったりすれば、乗客の迷惑となる。同社は、受け付け時にペットが暴れるなどした場合、持ち込みを断る方向だ。

 動物嫌いやアレルギーを持つ乗客への対応も必要となる。同社は今回、羽田行きの乗客約60人に事前に連絡して説明。一部の乗客から「自分の座席を前方に変えてほしい」との要望があり、応じたという。今後は獣医師とも相談し、適切な方法を探る。同社は料金設定などの検討も急ぐ考えで、白水政治社長は「ペットを家族同然と考える習慣ができつつある。実現させて旅行需要を増やしていきたい」と話している。

 ペットの持ち込みについては、交通手段によって対応が分かれている。

 JR九州は、飼い主がケージに入れた上で料金として290円を支払えば、新幹線、在来線とも小型の犬や猫などに限って持ち込める。西日本鉄道が運営する鉄道でも同様だ。

 一方、西鉄は、高速バスでは座席への持ち込みを認めておらず、犬や猫はトランク内で運ぶルールを導入している。走行中に鳴いたり臭いがしたりしても座席からの移動が難しく、他の乗客への影響が大きいためとされる。

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