ノーベル生理学・医学賞受賞者の本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授は16日、読売新聞などの取材に対し、国内初となるがん免疫療法の研究拠点「がん免疫総合研究センター」が4月1日、京大内に発足することを明らかにした。センター長には本庶氏が就任する。

 センターは京大が設立し、当初は学内の既存施設を使う。2022年度に新たな研究棟を整備する。最終的に六つの研究部門を設け、本庶氏の研究を基に開発されたがん免疫治療薬「オプジーボ」の効果を高めたり、事前に効果を予測したりする研究などに取り組む。

 各部門には10人程度の研究者・スタッフを配置する予定だ。国内外の研究者を公募するほか、30代の若手が自由に研究に取り組める環境も整える。

 本庶氏は「他大学や企業とも連携し、世界のがん免疫研究の中心となるようなセンターにしたい」と抱負を語った。

京大に「がん免疫総合研」、センター長に本庶佑氏

2018年7月23日『日本経済新聞』がん免疫薬 安く代替、小さな分子で成果相次ぐ

 体内の免疫の攻撃力を高める高価ながん免疫薬「免疫チェックポイント阻害剤」の働きを、10分の1のコストで実現しようとする研究で成果が相次いでいる。千葉県がんセンター研究所や東北大学は、作りやすい小さな化合物で同じ働きをするものを開発した。高額薬の普及で懸念される医療財政の悪化を回避するのに役立つと期待を集めている。

 免疫チェックポイント阻害剤は、従来の抗がん剤が効かない患者も治せる薬として注目を集める。悪性黒色腫や肺がん、胃がんの一種の治療などに利用されている。細胞を培養して作るたんぱく質「抗体」からなり、作るのに手間がかかるので高価。薬代は年1000万円を超える。

 千葉県がんセンター研究所の永瀬浩喜研究所長らは、がんへの免疫の働きを高める小さな化合物を開発した。バイオ医薬の高い薬効と、従来型の安い製造コストの双方を兼ね備えた「中分子医薬」というもので、製薬会社が有望と期待するタイプの一つだ。

 免疫チェックポイント阻害剤が結合する免疫細胞やがん細胞の表面にある分子などができるのを妨げ、免疫細胞の働きが弱まるのを防ぐ。マウスの実験では大腸がんが消え、生存期間は6倍の1年以上に延びた。製薬企業と協力し、大腸がんやすい臓がん向けで3~5年後の臨床試験(治験)開始を目指す。

 東京工業大学の近藤科江教授や門之園哲哉助教は、免疫チェックポイント阻害剤よりも小さい化合物で、同じように働くものを開発した。肺がんや胃がんなど向けに5~10年後の治験を目指す。

 東北大学の菊地晴久准教授と扶桑薬品工業はより小さい低分子の化合物で、免疫のブレーキにかかわる分子を約8割減らすことに成功した。「サンシュユ」と呼ばれる漢方薬原料の抽出物をもとに作る。動物実験で効果を確かめ、悪性黒色腫や肺がんの一種などで5~6年後の治験を目指す。

 これらの小さな化合物の新薬候補は、抗体に比べて製造しやすく低コストになる。これらの中から免疫チェックポイント阻害剤を代替できる薬が実現できれば、薬代を10分の1に抑えられる可能性があるという。

 免疫チェックポイント阻害剤で効果が出るのは患者全体の2~3割といわれる。製薬会社は治療効果を高めて普及を促すため、併用する治療法の開発を急いでいる。小野薬品工業などは5月、免疫チェックポイント阻害剤である「オプジーボ」と「ヤーボイ」を併用する治療法で国内初の承認を得た。欧米でも実用化が進む。

 高額薬の併用が広がれば、医療財政の一層の負担になる。オプジーボの価格は2度の引き下げを経て約6割下がったが、今でも年1000万円を超える。

 がんは日本人の半数がかかる病気だ。高齢化にともない、国の医療費の増大が予想されており、高額薬を代替できる安価な治療法が求められている。

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