2017年8月18日『日本経済新聞』京大など、不妊マウスから得たiPS細胞で精子を作成し、子を誕生させることに成功

 性染色体の異常で起きる「無精子症」のマウスの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から精子を作り、通常の卵子と体外受精させて、異常のない子を誕生させることに成功したと、京都大の斎藤通紀教授(細胞生物学)らの国際チームが17日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。

 無精子症であっても、iPS細胞にするとなぜ精子ができるようになるのかのメカニズムは不明。斎藤教授は「iPS細胞の作製過程で異常な染色体が欠落するのではないか。染色体や遺伝子異常が原因の不妊の治療法開発につながる可能性がある」としている。

 チームは、通常2本ある染色体が3本になるトリソミーという異常が性染色体にある無精子症のマウスを作製。

 このマウスからiPS細胞を作ると12%程度、異常のないものができたため、精子のもとになる生殖細胞に変化させた。この生殖細胞を、自身の精子は作れないようにした別のマウスの精巣に移植すると精子に変化し、卵子と受精させると、子が生まれた。生まれた子の性染色体は通常の2本だった。

 また性染色体異常で精子ができにくいクラインフェルター症候群の患者から細胞を採取してiPS細胞にすると、数%の細胞で異常がなくなっていた。21番染色体に異常のあるダウン症の患者の細胞からも、異常のないiPS細胞ができた。

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2017年8月7日『日本経済新聞』 第一三共、iPS細胞事業に参入 心筋再生で阪大発VBに出資

 体のあらゆる部分になることができる万能細胞「iPS細胞」を活用した医療品の開発や販売に加わる製薬企業が相次いでいる。第一三共は7日、心臓の筋肉を再生できる心筋シートの事業化に着手すると発表。ベンチャーのメガカリオン(京都市)らも血液の成分である血小板の量産技術を確立した。研究開発を促す法整備などを背景に、iPS細胞の実用化が間近に迫ってきた。

 第一三共は大阪大学発ベンチャーのクオリプス(横浜市)に出資した。出資額は非公開。iPS細胞をもとに作製した心筋シートを心臓に貼り付ける手法の実用化を目指す。重症の心不全患者に対し、心臓移植や人工心臓に代わる治療になる見込み。

 阪大の医師が臨床試験を準備しており、第一三共は生産技術の開発などで連携できるか探る。実用化すれば全世界での販売権も得る。第一三共にとってiPS分野での提携は今回が初。

 メガカリオンも同日、血液の成分である血小板をiPS細胞から量産する技術を、大塚ホールディングスやシスメックスなど国内の製薬・化学関連企業15社と確立したと正式発表した。20年の承認を目指す。実用化すれば献血に頼らず輸血ができるようになる。

 京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の作製に世界で初めて成功したものの、実際の関連ビジネスでは、日本企業が欧米企業の後じんを拝しているとの指摘もある。14年にはiPS細胞を含む再生医療等製品の早期承認制度がスタートするなど、国内で実用化を促す仕組みも整いつつある。本格的な国際競争に向け、日本企業は正念場を迎えそうだ。

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2017年5月26日『マイナビニュース』 免疫細胞を若返らせ、がんに対して強い効果をもつ細胞の作製に成功

日本医療研究開発機構は、疲弊した免疫細胞(T細胞)を若返らせ再活性化する技術を開発し、より効果的ながん治療へ応用することに成功したと発表した。

同研究は、慶應義塾大学医学部の吉村昭彦教授らと武田薬品工業の研究グループがAMED革新的先端研究開発支援事業の一環として行ったもので、同研究成果は英国時間5月22日に英科学雑誌「Nature Communications」のオンライン速報版に公開された。

がん患者の腫瘍組織などから分離したがんに特異的なT細胞を試験管内で大量培養し、患者へ再び戻す細胞移入療法はきわめて有用な治療法であると考えられているが、がん組織や試験管内で何度も刺激を受けることで、T細胞は疲弊状態に陥ってしまい、疲弊状態に陥ったT細胞を患者体内に戻しても、がん細胞を攻撃する力が弱く、十分な治療効果を得ることができないという問題を抱えていた。また、近年、メモリーT細胞の中に、幹細胞様メモリーT細胞(ステムセルメモリーT細胞=TSCM)という新たな細胞が発見された。TSCMは抗原による刺激をうけても疲弊状態にない若いT細胞で、寿命が長く、また再度の抗原刺激に対して素早く応答するので、がん治療やワクチンへの応用が期待されている。これまでに未感作T細胞に薬剤を用いてTSCMを誘導する方法は報告されているが、得られる細胞数は少なく、簡単なステップで、がんに特異的なTSCM細胞を大量に得る方法が求められていたということだ。

同研究グループは、効果的ながん特異的T細胞を用いた、細胞移入療法の確立をめざして、一旦活性化され疲弊したT細胞を未感作に近い状態(若返った状態)に戻す方法を探索した。その結果、活性化したT細胞をOP9-DL1と呼ばれるストローマ細胞と共培養すると活性化T細胞にNotchと呼ばれる特殊な刺激が入ることで、より未感作状態に近いT細胞が生まれることがわかった。この未感作状態に近いT細胞は、疲弊状態を示す免疫チェックポイント分子であるPD1とCTLA4の発現がほぼ消滅し、より若返った状態であった。このT細胞は、迅速に大量の活性化T細胞を生み出し、マウス体内において長期生存・自己複製する能力を示したという。これらの性質はステムセルメモリーT細胞によく似ており「誘導性ステムセルメモリーT細胞(iTSCM)」と名付けられた。

マイナビニュース

2017年5月25日『日本経済新聞』 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行抑制に効果か、京都大学が患者のiPS細胞を用いて実証

 京都大iPS細胞研究所の井上治久教授らは24日、全身の筋肉が次第に衰えていく難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療につながる薬の候補物質を突き止めたと発表した。マウスを使った実験で、慢性骨髄性白血病の治療薬の効果が高いことを確かめた。すぐに使えるわけではないが、有効な治療法がない難病の克服に近づいたとみている。

 ALSは運動神経が徐々に機能を失って全身の筋肉が動かなくなる病気で、原因や詳しい仕組みはわかっていない。50歳以上に多く、国内の患者は約9500人いる。

 研究グループはまず、ALSの患者の皮膚からiPS細胞を作って運動神経細胞に変化させて調べた。健康な人から作った神経細胞と比べると、異常なたんぱく質が蓄積して細胞死が起こりやすくなることを見つけた。さらに、処方薬など1416個の化合物について調べたところ、27個が細胞死を強く抑えていた。

 このうち慢性骨髄性白血病の治療薬「ボスチニブ」は細胞内で不要なたんぱく質を分解するオートファジーを促す機能があり、ALSの原因たんぱく質を減らすとわかった。ALSにかかっているマウスにボスチニブを投与すると、発症を遅らせて生存期間を延ばす効果を確認できた。

 いろいろなタイプのALSに効果が期待できるという。井上教授は「医療現場で使えるようになるには少なくとも数年、新たな薬の開発には5~10年の時間がかかる」と話した。

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筋肉の難病ALSに白血病薬が有効 京大、iPS活用

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