産経新聞 1月24日 iPS軟膏移植、厚労省が了承、京大が実施へ

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った軟骨組織を、膝関節の軟骨を傷めた患者に移植して治療する妻木範行・京都大教授らの臨床研究について厚生労働省の作業部会は24日、計画の実施を了承した。近く最初の移植手術を行う見通しだ。

 交通事故やスポーツで膝の軟骨を損傷するなどした20~70歳の患者4人が対象。健康な人から作って備蓄しているiPS細胞を使い、直径数ミリの軟骨組織を作り、患部に移植する。周囲に残っている軟骨と一体化し、痛みを緩和できるか確かめる。

 学内の審査を経て昨年11月、厚労省に計画を申請していた。患者の募集は行わない。

 軟骨は衝撃を緩和する役割があり、一度損傷すると再生しない。患部以外から一部を採取して移植する治療法があるが、十分な量を採取しにくいほか、移植しても正常に働かない場合もあるなどの課題があった。

 iPS細胞を使った再生医療の研究は、目の病気やパーキンソン病で既に実施されている。大阪大の心不全や京大の再生不良性貧血、慶応大の脊髄損傷の治療計画も国に承認され、実施の準備が進んでいる。

iPS軟膏移植、厚労省が了承、京大が実施へ

2019年12月9日『神戸新聞NEXT/神戸新聞社』ips細胞移植で失明回復の可能性 世界初臨床研究へ

神戸市立神戸アイセンター病院(神戸市中央区)が9日までに、健康な人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った、視細胞になる「神経網膜シート」を失明寸前の患者に移植する世界初の臨床研究を、大阪大学の審査委員会に申請した。同病院非常勤医師の万代道子理化学研究所副プロジェクトリーダーらが同日発表した。来年度にも手術を実施する。

 万代氏らの研究チームが、動物実験で機能や安全性を確認した。同病院では2014年、目の奥にある視細胞を保護する「網膜色素上皮」をiPS細胞で作ったものに換え、失明を「防ぐ」臨床研究を初実施したが、光を感じる視細胞の今回の移植が成功すれば、将来的には失明状態からの「回復」も期待できる。

 同病院によると、移植対象は、わずかに光を感じるだけになった難病「網膜色素変性症」の患者。同疾患は、目の奥の網膜で視細胞が周辺部分から死んで視野が狭まり、最後は失明に至る。日本国内に数万人の患者がいるとされるが、確立された治療法はない。

 今回の計画では、2人に片目ずつ、iPS細胞から作った視細胞になる直前の「前駆細胞」を使い、直径1ミリ程度のシートを1~3枚入れる。極めて小さい移植面積のため、劇的に見えるようにはならないが、安全性が確認できれば、枚数を増やすことを検討する。

 視細胞移植は、神経回路の形成などに時間がかかるため、手術後1年をめどに機能や安全性を評価する。懸念される合併症は現時点では見当たらないが、拒絶反応が起こる可能性があり、免疫抑制剤を使う予定という。

 万代氏らは、04年ごろから視細胞移植に向けた研究を開始。近年はiPS細胞などによる視細胞の移植片が情報伝達構造(シナプス)を作り、光に反応することを確認してきた。同時にがん化の危険性がないかも検証してきた。

 今回申請したのは、大阪大の「第一特定認定再生医療等委員会」。承認されれば厚生労働省に申請し、来年度の手術実施を目指す。同病院の栗本康夫院長は「臨床研究は中枢神経の再生に向けた第一歩。この一歩は小さな一歩だが、中枢神経の再生を夢見てきた医学研究者や患者にとっては大きな一歩だ」と話している。(霍見真一郎)



【解説】

 「光を感じる」「物を見分ける」「色を識別する」のは、段階の異なる能力だ。今回神戸アイセンター病院が発表した、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った、視細胞になる神経網膜シート移植。目の再生治療の「本丸」とも位置付けられる。世界の潮流は「中枢神経は再生されない」とされてきたが、この研究が成功し「光を感じる」ことが達成できれば、その先には、失明した人が形や色を見分けられるようになる可能性も広がるからだ。

 人間の目は、大きく分けて、水晶体、硝子体、網膜という三つの部分からできている。今回移植する視細胞は、三つの部分で最も奥にある網膜の一部。視細胞のさらに奥には網膜色素上皮がある。

 視細胞は、「桿体(かんたい)細胞」と「錐体(すいたい)細胞」に分かれており、桿体細胞は暗い場所で形を識別する能力、錐体細胞は明るい場所で色と形を識別する能力がある。

 iPS細胞から作った視細胞を動物に移植すると、動物側の細胞と一部が結び付き、情報伝達構造(シナプス)を形成する。これまでに、失明したマウスでも、移植後は光に反応していることを示す信号が読み取れ、行動実験でも光を認識していた。そのため、人間でも失明状態から回復する可能性があるとみられる。動物実験でシナプスの形成を確認したのは桿体細胞だけで、色が認識できているかまでは分かっていない。

 万代道子氏の研究チームによると、人間への臨床試験では、最初は移植片が極めて小さいため、患者の視界が格段に変わることは期待しにくい。しかし臨床試験のレベルが上がって移植面積が増えれば、光だけでなく、色を識別する能力につながることも期待できる。(霍見真一郎)

iPS細胞移植で失明回復の可能性 世界初の臨床研究へ

出典:神戸新聞

2019年10月23日『MBSニュース』「iPS心筋細胞」使う治験に向け国に申請へ…認められれば世界初の心臓病治療が開始

 大阪大学の研究グループが、重い心臓病の患者にiPS細胞から作成した心筋細胞を使った治験を行うため、近く国の審査機関に申請することが分かりました。認められれば世界初の心臓病治療が始まります。

 大阪大学心臓血管外科の澤芳樹教授の研究グループは、iPS細胞から作った心筋細胞をシート状にして、重い心臓病の患者の心臓に直接貼り付けることで、心機能の回復を目指す治療法を研究しています。

 去年5月、澤教授らは世界初となるiPS心筋細胞の臨床研究の承認を受け、昨年度中にも始める予定でしたが、大阪府北部を震源とする地震で細胞培養施設も被害を受け、研究開始が遅れていました。

 研究グループは、心筋シートを使った手術の治験の実施について、学内の審査委員会に申請し承認されたということで、今後は国の審査機関にも申請することにしています。承認されれば、世界初のiPS細胞を使った心臓病治療が始まります。

2019年9月26日『朝日新聞』iPS細胞から「ミニ多臓器」初成功 東京医科歯科大

 ヒトのiPS細胞から、肝臓と胆管、膵臓(すいぞう)を同時につくることができたと、東京医科歯科大の武部貴則教授らの研究チームが発表した。iPS細胞から、それぞれの臓器がつながった「ミニ多臓器」をつくったのは初めてという。論文は25日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。

 iPS細胞を使ったこれまでの研究は、神経や心臓の細胞といった特定の細胞をつくるものが多かった。武部さんらは2013年、iPS細胞から初めての臓器となる「ミニ肝臓」をつくった。しかし、一つの臓器をつくって移植したとしても、機能が十分に発揮されなかったり長く働かなかったりするという課題があった。

 研究チームは、iPS細胞から複数の臓器を同時につくれないかと考えた。まず、iPS細胞から前腸組織と中腸組織という消化器系の臓器のもとになる二つの組織をつくった。これをくっつけたところ、境界部分に肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞が出現した。

 この細胞を培養すると、肝臓と胆管と膵臓がつながったミニ多臓器ができた。受精から1~2カ月の胎児の臓器ほどの大きさという。チームは前腸組織から出るレチノイン酸という物質が、肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞ができるのを促したとみている。

 実際にヒトに移植するには臓器とともに血管なども同時につくらなければならない。武部さんは「まだ基礎研究の段階だが、10年以内に今回開発した技術を実用化させて患者に届くようにしたい」と話している。

2018年11月9日『FNN PRIME』iPS細胞でパーキンソン病治療 京大が世界初の治験

世界で初めての治験が、京都大学のチームによって行われた。

京都大学iPS細胞研究所・高橋淳教授は「治験に協力していただいた患者さんに、感謝・敬意を表したい」と話した。

京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授は、治験を受けた患者への感謝の気持ちを表した。

パーキンソン病は、情報伝達物質「ドーパミン」を出す脳内の神経細胞が減少して、体が震えたり動作が緩慢になったりする難病で、根本的な治療法はない。

高橋教授のグループは、特殊な遺伝子の型を持つヒトから作ったiPS細胞を使い、ドーパミンを出す神経細胞を作り出した。

そして10月、世界で初めて、作り出した神経細胞およそ240万個を、50代の男性患者の脳に移植した。

高橋教授は、「薬が必要ないぐらい良くなることがベストです。セカンドベストとしては、薬を飲みながらでも、良い状態を保てるというところが目指すところ」と話した。

研究チームによると、経過は良好で、これから2年かけて安全性や効果を確認するという。

2018年11月13日『朝日新聞』iPSで脊髄損傷治療、慶大が承認へ 来夏にも臨床研究

 世界で初めてiPS細胞から神経のもとになる細胞をつくり、重い脊髄(せきずい)損傷の患者に移植する、慶応大のグループの臨床研究について、再生医療を審査する学内の委員会は13日、計画の妥当性を検討した。大きな異論はなく、承認される見通しになった。承認後グループは計画を国に申請する。

 厚生労働省の専門部会で認められ、順調に進めば来夏にも臨床研究が始まる。

 事故などで国内で毎年約5千人が脊髄損傷になり、患者は10万人以上いるとされる。脳からの命令を神経に伝えることが出来ず、手足が動かせなくなったり、感覚がまひしたりする。現在は損傷した部位を完全に修復する治療法はない。

 計画しているのは岡野栄之教授(生理学)と中村雅也教授(整形外科学)らのグループ。京都大iPS細胞研究所から提供されたiPS細胞を、神経のもとになる細胞に変化させる。200万個の細胞を脊髄の損傷部に注入し、脳からの信号を伝える組織をつくることで、運動機能や知覚の回復を目指す。

 運動や感覚の機能が失われた「完全まひ」で18歳以上の4人が対象。組織の修復が盛んになる損傷から2~4週間程度の患者にする。損傷から時間がたった人より修復を期待できるためだ。他人由来のiPS細胞を使うため、免疫抑制剤で拒絶反応を抑える。移植した細胞が腫瘍(しゅよう)化する恐れがあり、移植後の半年間のリハビリと合わせ、1年かけて安全性と効果を慎重に確認していく。

 岡野教授らは脊髄を損傷した小型サルの一種マーモセットに、ヒトのiPS細胞からつくった細胞を移植し、歩けるよう回復させることに成功している。

 iPS細胞を移植して治療する臨床研究は、目の病気の加齢黄斑変性で6人に実施。京都大でパーキンソン病の治験が進む。大阪大では心不全の患者に心臓の筋肉のシートを移植する計画。京都大では血液の難病などでも予定されている。(戸田政考)

2018年5月17日『日本経済新聞』iPS細胞本格利用へ前進 阪大、年度内に心臓病治療 再生医療の中軸に

 日本発の再生医療であるiPS細胞(総合2面きょうのことば)の治療が新たな段階に入った。重い心臓病の治療を目指す大阪大学の臨床研究が2018年度中に始まる。京都大学の山中伸弥教授らがiPS細胞の開発に成功してから10年が過ぎ、既存の医療では克服できない難病治療という領域に踏み出す。

 iPS細胞による再生医療は14年に始まった目の難病である「加齢黄斑変性」に続く。心臓では世界初となる。阪大は18年度中に1人目の治療を始め、3年くらいかけて3人を治療する。16日に記者会見した阪大の澤芳樹教授は「何年かかろうが、一人でも多くの患者を救うべく、あらゆる努力をする決意と覚悟がある」と述べた。

 山中教授は阪大の計画了承を受けて「慎重に経過を見守りたい」とし、「(研究所で備蓄を進める)iPS細胞のストックを使っていただけるよう、より良い細胞を十分に提供していきたい」とのコメントを発表した。

 国内ではiPS細胞を使った再生医療の研究が進み、世界に先駆けて様々な病気を対象に治療計画が相次いでいる。

 京大の高橋淳教授らは、パーキンソン病の治療を目指す医師主導治験を18年度中にも始める計画だ。ドーパミンを出す神経細胞を他人のiPS細胞から作製し移植する。

 慶応義塾大学の岡野栄之教授と中村雅也教授らは脊髄損傷の患者を治療する臨床研究を計画する。神経のもとになる細胞を他人のiPS細胞から作製して脊髄損傷した部位に移植して回復する。

 京都大学iPS細胞研究所も血が止まりにくい難病である血小板減少症の臨床研究を計画する。

 これらの計画も阪大の計画が了承を受けたことが追い風になりそうだ。

 阪大が乗り出す臨床研究について厚生労働省の再生医療等評価部会は16日、手順や安全性を確認した。患者の対象は心臓の筋肉(心筋)に十分な血液が届きにくい「虚血性心筋症」で、重症心不全になった18~79歳の3人。心筋の働きが弱まり、既存の治療法では回復が見込めない。澤教授はこれまでも患者自身の太ももの細胞から作ったシートで治療を進めたが、症状の重い患者には効果が限られていた。

 今回は京大iPS研が備蓄する他人のiPS細胞を心筋細胞に育てる。他人の細胞なら患者が早く移植を受けられる。臨床研究で安全性が確認できれば、実用化に向けて効果を確認する医師主導治験を目指す。

 澤教授は対象患者は国内で数千~1万人と推定。治療費は実用化している心臓病治療の再生医療製品と「同程度にできればいい」(澤教授)と千数百万円程度を見込む。

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